ベテラン探偵が語る家出人捜索事情
土地土地に応じて、家出人の典型的な行先というものがあります。
喧嘩して家を飛び出したとか、計画的でない家出の場合、そういう場所で見つかる可能性が高いです。
逆にそういうことを知らないと捜索先を絞り込めず、大変な労力と時間をムダにすることになります。
原一探偵事務所で聞いてきた話をご紹介します。
(2016年の取材内容です。)
関東の家出人事情(A探偵談)
【原一探偵事務所・本社A探偵】
横浜・埼玉など首都圏近辺で長い調査経験を持つベテラン探偵。
話の内容は2016年6月のインタビューから、家出人捜索に関することを抜粋。
尾行・張り込み等の調査実務に差し支えるので、名前はイニシャル、顔はモザイク加工にしています。
埼玉県の家出人
埼玉の家出人の場合、行先はまず池袋、そして隣町・新宿。
猥雑な街で、安価に泊まれる漫画喫茶やネットカフェがものすごくたくさんある。
家出人が埼玉県内にとどまることはない。(県内の友人宅に転がり込んだ場合などを除く)
埼玉県内の大都市、たとえば大宮には家出人に居心地のいい雰囲気の場所や面白い場所はない。
県内の電車は池袋に直通している。
そういうわけで、埼玉県内に残る理由はないわけです。
面白いことに池袋になじみのある人は新宿を怖い町と思い、新宿になじみのある人は池袋を怖い町と思う傾向がある。
家出以前にどちらの街によく行っていたかわかると、優先順位がつけやすい。
新宿・池袋でないとすると、上野・秋葉原。
群馬県の家出人
群馬県の家出人の場合も前橋・高崎・伊勢崎などの県内都市にとどまることはなく、電車の終点・上野。
上野はレトロな雰囲気で、田舎から来た人、おしゃれでない人にも居心地がいい。
そして上野のそばの秋葉原はオタクの聖地で、ここも居場所のない人に心地よい雰囲気がある。
いずれにせよ、都内だったら、池袋・新宿と上野・秋葉原が一番可能性が高い。
渋谷・原宿は「おしゃれなまぶしい街」なので、滞在先になることは稀だが、見物歩きしている可能性は十分ある。
大崎・品川・新橋とかは、まずありえない。
神奈川県の家出人
しかし、神奈川県の家出人は、都内にも至近距離であるにも関わらず、まず横浜駅周辺が第一優先順位なんです。
以上は、われわれの長年の捜索経験から得られた統計データで、いわば企業秘密です。
それを公開してしまっているのは、それを知ったところで素人が探すのはなかなか難しいだろうと思うからです。
四国の家出人事情
【原一探偵事務所・松山支社・T探偵】
四国内の家出人の大きな行先のひとつが四国八十八か所霊場です。
四国外の家出人もここを目指す場合がよくあります。
当社の場合、ほぼすべてのお寺に張り紙を張らせてもらったことがあるし、宿泊所の状況も全部把握しています。
大切にしているのは、家出人が見つかった後に協力していただいた先にお礼に伺うこと。
こうすることで「本当に家族のために家出人探しをしている探偵社なんだな」という信用ができます。
それにより、次から素早く協力してもらえるようになります。
当社は北海道から九州まで全国18拠点あって、それぞれがこの種の地域のネットワークを蓄積している。
だから、捜索が早いんです。
素人さんや地域に縁のない探偵さんが捜索に行っても、宿泊施設などの協力を得るのはそんなに簡単ではないです。
安易に受けると、ストーカー・借金取り・ヤクザなどの人探しに協力してしまうリスクがあるからです。
長い時間をかけて蓄積した統計データと信用が、当社が家出人捜索に強い理由だと思います。
自殺の危険がある家出人の行き先
【原一探偵事務所・本社 K部長】
札幌支社の立ち上げに関わり、8年にわたって北海道の調査を経験。現在は本社勤務。
自殺の危険がある家出人というのは、明確な傾向がある。
まず、男性。
それも仕事に行き詰まったり、リストラされた人。
男が強いというのは逆で、女性の家出人が自殺することは少ない。
そして自殺決行の前に思い出の場所を旅行するのも際立った傾向です。
懐かしい土地を訪ね、最後の見納めをした後で、近くの人気のない場所で命を絶つのです。
だから家出の事情や遺留物から自殺の危険があると判断したら、ルーツを洗う必要がある。
生まれ育った町、卒業した大学、特に思い出深い旅行先など。
一方、これは捜索範囲を日本全国に広げかねないから、優先順位をつけることが大切。
思い出の場所のうち、どこが一番可能性が高いか?
それを見極めるには、やはり経験がものを言うんです。